(1)投資信託の配当金
前回、投資信託 REITの違い(9)について見ましたが、投資信託の利益計算について、2013年3月16日の日経新聞16面を見てみましょう。「分配金はもらっているが、値段は下がっているし……」。自分が買った投資信託で結局、いくら利益が出ているかすぐに分からない投資家は多いだろう。投資信託の利益計算で重要になるのは、分配金を支払うと同時に、投資信託の基準価格は下がることになりますので投資の収益が分かりにくいことです。
(2)投資信託毎月分配型と基準価額の問題点
分配金を毎月払う投信が主流となり、基準価格だけでは損得は分からなくなってきた。投信は分配金を払うと、その分だけ基準価格が下がるからだ。毎月分配型では分配金の支払いが膨らむ分、基準価格への影響が大きくなりやすい。投資信託の利益計算を行うときに問題となるのは、投資信託基準価格(2)でまとめた、グローバル・ソブリン・オープンのような事例です。
- 分配金の受け取り
- 基準価額の値下がり
- 金融会社は分配金を複利運用した前提で、基準価額の変動を公表
(3)金融会社の公表している資料の問題点
投資信託 通貨選択型のリスク(7)の図表を参照すると、分配金を再投資した場合の投資信託価額を公表していることが分かります。投資信託から分配金を受け取った投資家の中で、すぐに同じ投資信託に再投資する投資家は少ないと思いますので、現実離れしていると思います。投資信託の毎月分配型を保有している投資家で、配当金を同じ金融商品に投資するのであれば、税金や手数料の関係で最初から配当金を受け取らない投資信託の方が、資金運用で有利になるからです。
(4)投資信託に配当金支払いによる値下がりを考慮
そこで、金融庁が普及に力を入れるのが「トータルリターン」(総収益)という損益のとらえ方だ。イメージ図は、基準価格1万円で投信を購入し、3年間の保有で分配金を毎月50円受け取った一方、基準価格が1000円下がった場合を示す。分配金の累計の受取額で値下がり分をカバーし800円の利益(税引き前ベース)となる。金融庁は、投資信託の利益計算に配当金支払いによる値下がりを考慮した損益の公表が普及するように検討しています。
- 投資信託の価格 1万円で購入
- 投資信託の分配金 毎月50円
- 投資信託の分配金 年間600円
- 投資信託の分配金 3年間1800円
- 投資信託の価格が配当金の支払いと価格変動で、9000円に値下がり
(5)投資信託の損益を見る重要性
最近の投信では、年間の分配金を基準価格で割って計算する分配金利回りが注目されやすい。しかし、損益の把握には、受け取った分配金と基準価格の変動の両方をみる方がいい。投資信託の損益を見る重要性について、日経新聞は控えめに書いていますが、毎月分配型の金融商品を保有するのであれば、投資信託の分配金と基準価格の変動は必ず見た方がいいです。
投資信託の中でも、毎月分配金を受け取るタイプの金融商品は、管理人は手数料や複利のメリットが十分に生かすことができないのでお奨めはしません。投資家の中には、それを理解したうえで金融商品を購入されるのであれば、基準価格と分配金の通算で損益を理解することが重要になります。
(6)投資信託の売買と現実
現実には、途中で一部解約したり、買い増したりすることがある。その場合は売買による残高の増減を考慮してトータルリターンを算出する。金融商品の購入は、余剰資金で行うことが原則ですが、投資家の中には突発の事態が発生した場合に突然解約する方がいると思います。金融庁が推奨する投資信託の計算方法のほうが、投資運用会社が提示する配当金を再投資した場合のモデルよりも、現実的であると言えますね。
(7)2014年後半から投信の利益計算を導入
証券会社や銀行などが顧客に、個別の投信ごとにトータルリターンを通知する制度の導入を、金融庁は昨年暮れに決めた。ただ、通知の頻度など詳細を検討中で、開始は来年後半ごろになりそうだ。投資信託の新しい計算方法は、2014年後半が導入予定のようですね。投資信託を購入する際は、投資信託の他にもETF REITの違い、金融商品の選択肢が複数あることを理解するのがよいのではないでしょうか。
投資信託とは(1)投資家にとって、投資機会を提供する金融商品です。金融資産を効率的に増やすためには、銀行や証券会社の担当者からの情報収集に頼るのではなく、情報収集の継続と制度の変更をチェックすることが重要になりますね。 スポンサードリンク
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